売上総利益率と売上高営業利益率2つの利益率の違い|「原価管理」と「総合的な経営効率」

売上総利益率(粗利率)と売上高営業利益率は、企業の収益性を分析するうえで重要な指標です。

売上総利益率は原材料費や生産コストの効率性(原価管理の良し悪し)を、売上高営業利益率は販管費を含めた総合的な経営効率を反映します。

例えば、粗利率が安定しているのに営業利益率が低下している場合、マーケティング費用の増加や人件費の上昇、研究開発費の拡大など、販管費関連の問題が隠れている可能性があります。

本解説では、このような状況での課題特定方法と具体的な改善策を、現場目線でわかりやすく整理します。

2つの利益率の定義と役割

売上総利益率(粗利率)
「原価管理の効率性」を表す指標。
原材料費や生産コストの最適化が反映されます。
改善例
仕入単価の交渉、生産効率向上。

売上高営業利益率
「販管費を含めた総合的な収益性」を表す指標。
マーケティング費用や人件費、研究開発費の影響が反映されます。
改善例
広告費の最適化、人件費抑制。

指標計算式反映する内容
売上総利益率(粗利率)売上総利益売上高×100売上高売上総利益×100原価管理の効率性(仕入れ・製造コストの最適化)
売上高営業利益率営業利益売上高×100売上高営業利益×100販管費を含めた総合的な収益性(経営全体の効率性)

a) 売上総利益率(粗利率)の特徴

原価管理の効率性を測る
売上高から直接的な製造・仕入コスト(売上原価)を差し引いた利益率です。

売上高1,000万円、売上原価600万円 → 売上総利益率40%

改善方法
仕入単価交渉、生産効率向上、廃棄ロス削減。

b) 売上高営業利益率の特徴

総合的な経営効率を評価
売上総利益から販売費・一般管理費(販管費)を差し引いた利益率です。

売上総利益400万円、販管費300万円 → 営業利益100万円 → 売上高営業利益率10%

改善方法
広告費最適化、人件費抑制、間接部門の生産性向上。

販管費関連の問題を特定する分析法

ケーススタディ:粗利率は安定だが営業利益率が低下

項目前期実績今期実績変化
売上高1,000万円1,000万円±0%
売上総利益率40%40%±0%
売上高営業利益率15%10%▲5%

a) 問題の特定

粗利率が安定
原材料費や生産コストの管理は適切(原価管理に問題なし)。

営業利益率低下
販管費の増加が主な原因と推測されます。

b) 販管費増加の要因

マーケティング費用の増加
広告宣伝費や販促費が過剰になっていないか。

効果の低いデジタル広告への投資増加。

人件費の上昇
従業員の増員や残業代の増加。

販売部門の人員拡大による固定費増。

研究開発費の増大
新製品開発に伴う一時的な支出増。

次期主力商品の開発費が前年比2倍に。

間接部門の非効率性
事務部門の人員過剰やシステム投資の失敗。

改善策の具体例

a) マーケティング費用の最適化

ROI分析
広告媒体ごとの費用対効果を測定し、低効率な広告を削減。

デジタルマーケティング活用
SNSやSEOなど低コスト手法へのシフト。

b) 人件費抑制

業務プロセス改善
販売事務のデジタル化(例:AIチャットボット導入)
残業時間の管理強化(タイムカードシステムの厳格化)

c) 研究開発費の見直し

費用対効果の明確化
開発プロジェクトの優先順位付け(収益化の可能性が高いものに集中)
外部委託や共同開発によるコスト分担

d) 間接部門の効率化

アウトソーシング
経理や総務業務の外部委託

クラウドシステム導入
ペーパーレス化やクラウドストレージ活用による事務コスト削減

分析のポイント

観点売上総利益率売上高営業利益率
主な改善対象原材料費、生産効率販管費、間接コスト
経営層の関与現場部門(製造・購買)経営戦略部門
短期改善の難易度比較的容易(単価交渉など)困難(組織改革が必要)

まとめ

売上総利益率(粗利率)と売上高営業利益率は、「原価管理」と「総合的な経営効率」という異なる次元の課題を映し出します。

粗利率が安定しながら営業利益率が低下する場合、販管費の増加が主要因であり、特にマーケティング費用・人件費・研究開発費の見直しが急務です。

効果的な改善には、費用項目ごとの詳細な分析と、デジタル化や業務プロセス改革による構造的な効率化が不可欠です。これらの指標を連動して監視し、持続可能な利益構造の構築を目指しましょう。

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