債券市場は、金融市場において非常に重要な役割を果たしており、金利変動や市場の混乱は、債券価格だけでなく、株式市場や経済全体にも広範な影響を及ぼします。
ここでは、金利上昇が債券価格に与える影響、そして債券市場の混乱が株式市場に波及するメカニズムについて、より詳細に解説します。
債券とは?金利と債券価格の逆相関について
債券は、定期的に一定額の利払い(クーポン)を行い、満期時に元本を償還する金融商品です。
金利変動時に債券価格が変化するのは、この固定的なキャッシュフローの現在価値が変化するためです。
債券価格と金利の逆相関関係は、債券の基本的な性質から生じています。
金利上昇時の債券価格下落
額面100万円、クーポン2%(年20,000円)、残存期間10年の債券があるとします。
市場金利が2%から3%に上昇した場合、この債券の価格は約91.7万円に下落します。
これは、3%の新規債券と比較して魅力が低下するためです。
計算式
91.7万円 = (20,000円 × 10年 + 1,000,000円) ÷ (1 + 0.03)^10
金利下落時の債券価格上昇
逆に、市場金利が2%から1%に下落した場合、同じ債券の価格は約109.1万円に上昇します。
これは、1%の新規債券と比較して魅力が増すためです。
計算式
109.1万円 = (20,000円 × 10年 + 1,000,000円) ÷ (1 + 0.01)^10
この計算は、次の2つのステップで行われます。
将来のお金の価値を現在のお金に換算
10年後に受け取れる1,200,000円は、現在の価値に換算すると、3%の金利を考慮すると、約917,000円相当になります。
これは、もし今917,000円を年利3%で運用すれば、10年後には約1,200,000円になるからです。
債券価格の決定
この債券の価値は、上記の現在価値に基づいて、約91.7万円となるわけです。
なぜ価格が下がるのか?
市場金利が2%から3%に上昇した場合、新規に発行される債券は3%の利回りを提供します。
この債券は2%の利回りしか提供しないため、投資家にとって魅力的ではなくなります。
そのため、この債券の価格は、3%の利回りの債券に見合うように下落します。
金利上昇と債券価格において、金利上昇による債券価格の下落
債券価格と金利は、密接な関係にあり、逆方向に動くという性質があります。
債券価格と金利の関係は、「シーソー」のようなものだと考えると理解しやすいでしょう。
金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が低下すると債券価格は上昇します。
新規発行債券の利回り上昇
金利が上昇すると、新規に発行される債券の利回りも高くなります。
例えば
市場金利が2%から3%に上昇した場合、新規発行される債券は3%程度の利回りで発行されることになります。
既存債券の魅力低下
既存の債券は、発行時に決められた固定利率(クーポン)で利息を支払い続けます。
例えば
2%の利率で発行された債券は、市場金利が3%に上昇しても、依然として2%の利息しか支払いません。
これにより、既存債券の相対的な魅力が低下します。
価格下落による調整
市場では、既存債券の価格が下落することで、実質的な利回りを新規発行債券と同程度まで引き上げようとします。
例えば
額面100円、クーポン2%の債券の価格が約96.7円に下落すると、その債券の利回りは約3%になります(2円÷96.7円≒2.07%)。
デュレーションの影響
債券価格の変動幅は、その債券のデュレーション(金利感応度)に大きく依存します。
デュレーションが長い債券ほど、金利変動に対する価格変化が大きくなります。
例えば
デュレーションが5年の債券の場合、金利が1%上昇すると、理論上は債券価格が約5%下落します。
短期債と長期債の違い
一般的に、短期債券は長期債券に比べて金利感応度が低いため、金利上昇時の価格下落幅は小さくなる傾向があります。
しかし、政策金利の変更は短期ゾーンの金利に直接影響するため、利上げ時には短期債券の方が長期債券よりも利回りの上昇幅が大きくなる傾向があります。
信用リスクの影響
高利回り社債などの信用リスクが高い債券の場合、景気の先行き期待が高まるような局面では、スプレッド(上乗せ金利)が拡大し、利回りが上昇(債券価格は下落)する一方、利上げ時には利回りの上昇幅が小さくなる傾向があります。
長期的な影響
金利上昇が緩やかで長期間続く場合、債券のインカムゲイン(利子収入)の積み上げにより、債券価格の下落によるキャピタルロスを埋めることが期待できます。
これは中長期的な投資において重要な要素となります。
このように、金利上昇による債券価格の下落は、市場の需給バランスや債券の特性、経済環境など、様々な要因が複雑に絡み合って生じる現象です。
これらの要因を総合的に考慮し、自身の投資戦略に合わせて債券投資を行う必要があります。
また、より高い利回りを得るために、新たに発行される債券を求めるようになります。
デュレーション(金利感応度)
債券価格が金利変動に対してどれだけ敏感に反応するかを示す指標が「デュレーション」です。
デュレーションは、債券の平均回収期間を表し、数値が大きいほど金利変動に対する感応度が高く、価格変動も大きくなります。
具体例
デュレーションが5年の債券は、金利が1%上昇すると、理論上は約5%価格が下落すると予想されます。
デュレーションが10年の債券は、金利が1%上昇すると、理論上は約10%価格が下落すると予想されます。
長期債ほどデュレーションが大きく、金利変動による価格変動が大きくなる傾向があります。
債券市場の混乱が株式市場に波及するメカニズム
債券市場の混乱は、単に債券投資家だけでなく、株式市場にも様々な経路を通じて影響を及ぼします。
そのメカニズムは以下の通りです。
リスク回避姿勢の強まり
債券市場が不安定になると、投資家はリスクを避ける傾向が強まります。
その結果、株式などのリスク資産から資金を引き上げ、より安全な資産(現金や国債など)に資金を移動させる動きが強まります。
この資金流出が、株式市場の株価下落を招く可能性があります。
具体例
債券市場で急激な金利上昇が発生すると、投資家は株式市場から資金を引き上げ、より安全とされる国債に投資するようになります。
債券市場の不安定化は、市場全体に不安心理をもたらし、株価下落を加速させる可能性があります。
資金調達コストの上昇
債券市場で利回りが上昇すると、企業が資金を調達する際のコストが増加します。
企業は、債券発行による資金調達コストが上昇するため、事業拡大や設備投資などを抑制する可能性があります。
これは、企業の収益性を圧迫し、株価にマイナスの影響を与える可能性があります。
具体例
債券利回りが上昇すると、企業は借入金利の上昇に直面し、利益が圧迫されます。
企業が資金調達コストの上昇を嫌い、設備投資や事業拡大を抑制すると、成長期待が後退し、株価下落につながる可能性があります。
経済成長への懸念
債券市場の混乱は、将来の経済成長に対する不安を反映している可能性があります。
特に、長期金利の上昇は、将来の経済成長に対する期待感の後退を示唆することがあります。
この経済成長への懸念は、株式市場の投資家心理を悪化させ、株価下落を招くことがあります。
具体例
債券市場で長期金利が急上昇すると、投資家は将来の経済成長を悲観的に捉え、株式市場から資金を引き揚げる可能性があります。
債券市場の不安定化は、将来の経済見通しに対する不透明感を増大させ、株式市場の投資意欲を減退させる可能性があります。
ポートフォリオ再構築
機関投資家(年金基金や保険会社など)は、債券と株式の配分比率を一定に保つために、定期的にポートフォリオの再構築を行います。
債券価格が下落した場合、機関投資家は債券を買い増し、株式を売却することで、ポートフォリオのバランスを調整します。
このポートフォリオ再構築の動きが、株式市場の需給バランスを悪化させ、株価下落につながる可能性があります。
具体例
機関投資家が保有する債券価格が下落した場合、債券の買い増しと株式の売却を行い、ポートフォリオのバランスを調整します。
この機関投資家の行動が、株式市場の売り圧力を強め、株価下落を引き起こす可能性があります。
金融政策への影響
債券市場の混乱は、中央銀行の金融政策決定に影響を与え、それが間接的に株式市場にも影響を及ぼす可能性があります。
例えば
債券市場が過度に不安定化した場合、中央銀行は金利引き上げを一時的に見送ったり、量的緩和策を導入する可能性があります。
これらの政策変更は、金融市場全体に影響を与え、株式市場の株価変動につながる可能性があります。
具体例
債券市場の混乱を受けて、中央銀行が金利引き上げを一時的に見送ると、投資家心理が改善し、株式市場の株価上昇を招く可能性があります。
債券市場の混乱が深刻化した場合、中央銀行が量的緩和策を導入すると、株式市場に資金が流入し、株価を押し上げる可能性があります。
📝まとめ
債券市場は、金融市場全体に大きな影響を与える重要な市場です。
金利上昇は債券価格を下落させる一方、債券市場の混乱は、リスク回避姿勢の強まり、資金調達コストの上昇、経済成長への懸念、ポートフォリオ再構築、金融政策への影響などを通じて、株式市場にも悪影響を与える可能性があります。
投資家や政策立案者は、債券市場の動向を常に注視し、その影響を慎重に評価することが重要です。
債券市場の理解は、株式市場への投資戦略を立てる上でも不可欠であり、金融市場全体を俯瞰する上で、非常に重要な知識となります。
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